蛋白尿とは
蛋白尿は、腎臓に何らかの異常が起きている可能性を示す重要な検査所見です。腎臓は血液をろ過し、必要な物を体に留め、不要な物を尿として排出する役割を担っています。通常、蛋白質は体にとって必要な物であり、腎臓のフィルターである糸球体によって尿中に出ることはありません。しかし、腎臓が何らかの障害を受けると、糸球体のフィルター機能が低下し、血液中の蛋白質が尿中に漏れ出てしまいます。
蛋白尿が出ているということは、腎臓が何らかの形でダメージを受けている可能性が高いことを示しています。そのため、蛋白尿は腎臓の障害の指標として重要です。
蛋白尿が出る原因
蛋白尿の原因は多岐にわたりますが、主なものは以下のとおりです。
糖尿病・高血圧
生活習慣病は腎臓の血管や糸球体にダメージを与え、蛋白質が尿に漏れやすくなります。特に糖尿病性腎症や高血圧性腎症が代表的です。これらの疾患は慢性的に腎機能を低下させ、重度の腎機能障害につながることがあります。
免疫・遺伝の異常
IgA腎症やネフローゼ症候群などでは、糸球体の炎症によりフィルター機能が低下し、蛋白尿が現れます。IgA腎症は日本人に多く見られる疾患で、早期発見と継続的な治療が重要です。
腎炎・膠原病関連疾患
ループス腎炎や紫斑病性腎炎など、全身性の免疫疾患が腎臓を侵すことで蛋白尿が出現することもあります。
一時的な蛋白尿
起立性蛋白尿など、若年者に多く、立ち仕事や運動のあとに一時的に出現することがあります。ストレスや発熱、過労時にも一過性の蛋白尿が見られることがありますが、これらは持続しないことが多いです。
これらの原因を特定するために、腎臓に関する血液検査、尿検査、エコー検査などを行います。
蛋白尿を放置するリスク
蛋白尿を放置してしまうと、さまざまな深刻な健康リスクが生じます。以下のような影響が知られています。
腎機能障害
糸球体の障害が進行し、慢性腎臓病(CKD)に移行するリスクが高まります。腎機能が低下すると、体内に老廃物や毒素が蓄積し、むくみ、呼吸困難、食欲不振、倦怠感、心不全などを引き起こすこともあります。末期腎不全に至ると、透析や腎移植といった腎代替療法が必要になります。蛋白尿が多くなるほど末期腎不全になる可能性が高いとされており、特に注意が必要です。
心疾患・脳卒中のリスク増加
蛋白尿がある人は動脈硬化が進行しやすく、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。糖尿病や高血圧が併存している場合はリスクがさらに増加します。
慢性腎臓病はほとんどの場合、初期には自覚症状がありません。そのため、尿検査や血液検査で腎機能の低下や腎臓に障害がないかを定期的に検査することが重要です。特に糖尿病や高血圧といった基礎疾患のある方は、これらの検査を積極的に受けることが推奨されます。
蛋白尿を改善させる治療・方法
一度悪くなった腎臓を再生する方法はありませんが、蛋白尿を改善させることで残っている腎機能を保護することができます。治療には以下の方法があります。
食事療法

塩分を減らし、野菜・果物・蛋白質の量を調整します。塩分を控えることで腎臓の負担を軽減し、腎機能の低下を防ぎます。
運動療法

有酸素運動や筋力トレーニングは腎機能を維持・改善するために有効です。これらの運動は血圧の管理や全身の健康維持に寄与し、腎機能保護をサポートします。運動療法は肥満解消や血糖・脂質の改善にも効果があり、生活習慣病の管理に有効です。
薬物療法

腎臓の保護作用がある「RAS系阻害薬」や「SGLT-2阻害薬」などの内服薬を使用し、蛋白尿の改善と腎機能の保護を図ります。
生活習慣の見直し

禁煙や飲酒の制限、ストレス管理、睡眠の質の改善も腎機能維持に寄与します。規則正しい生活リズムを整えることが、腎臓の健康に直結します。
まとめ
当院では、蛋白尿の原因を詳細に調査し、最適な治療法を提供いたします。早期発見と適切な治療が腎機能の維持に不可欠です。定期的な健康チェックをお勧めします。