IgA腎症
IgA腎症とは
IgA腎症は、尿検査での血尿や蛋白尿、血液検査での腎機能低下を認める疾患です。
日本を含む東アジアで特に多く見られる腎炎の一種で、幅広い年齢で発症しますが、特に20~30歳代に多く見られます。初期には症状がほとんどなく、健康診断や学校検診で発見されることが多いとされています。成人発症のIgA腎症では10年間で透析や移植が必要な末期腎不全に至る確率は15~20%との報告もあり、できるだけ早い診断・治療介入が重要です。
IgA腎症の原因
IgA腎症の正確な原因は未だ解明されていませんが、IgAが腎臓の糸球体に異常に沈着することで引き起こされると考えられています。この沈着したIgAが糸球体で炎症を引き起こし、次第に腎臓の機能が低下していきます。
主な症状
IgA腎症は初期段階では自覚症状がほとんどなく、健診の尿検査で血尿や蛋白尿を指摘され、偶然見つかることが多い疾患です。
風邪をひいた後に肉眼的に血尿が目立つことがあり、その際に発見されることもあります。進行は年単位で非常に緩やかですが、症状がないために見過ごされ、腎機能が悪化してから診断されるケースも少なくありません。早期発見が予後の改善につながるため、定期的な尿検査が非常に重要です。
診断と検査
IgA腎症の診断には、腎臓の組織を採取して詳しく調べる腎生検が必要です。この検査により、糸球体に沈着しているIgAを確認し、診断が確定します。尿検査や血液検査も合わせて行われ、腎機能の評価をいたします。
治療方法
IgA腎症の治療は、病状や進行度に応じて検討されます。主な治療法は以下の通りです。
- 免疫抑制療法:腎臓の過剰な免疫反応を抑えるために、ステロイドなどの免疫抑制薬を使用します。副作用のリスクもあるため、メリットとデメリットを考慮しながら治療が行われます。
- 扁桃摘出手術:IgAの産生が扁桃腺で行われることが多いと考えられており、扁桃摘出手術が有効とされています。特に日本では、扁桃摘出術とステロイドを併用した治療が広く行われています。
- 降圧薬の使用:アンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)やACE阻害薬が用いられ、血圧のコントロールを行い、腎臓への負担を軽減します。
- 保存的加療:基本的な治療で、食事療法(減塩、蛋白質制限など)や運動療法、生活習慣の改善が含まれます。
生活習慣の改善
IgA腎症の治療には、生活習慣の改善も重要な要素です。以下のポイントに注意して、日常生活を見直すことが推奨されます。
- 禁煙:喫煙は腎機能の低下、蛋白尿に関連するため、禁煙が推奨されます。喫煙本数を減らすことでもリスクの軽減が期待されます。
- 塩分制限:塩分の過剰摂取は、腎機能の低下や高血圧のリスクを高めるため、1日の摂取量を制限することが勧められています。
- 運動:激しい運動は一時的に尿蛋白を増加させることがありますが、適度な運動は腎機能の維持に役立ちます。
予後と管理
IgA腎症は、放置すると腎不全に進行し、最終的に透析や腎移植が必要となる可能性があります。予後は病気の進行程度に大きく左右されますが、早期に発見し、適切な治療を行うことで、病気の進行を遅らせることが可能です。定期的な診察と検査が病気の進行を防ぐために重要です。
- 一般社団法人 全国腎臓病協議会 「慢性糸球体腎炎」
https://www.zjk.or.jp/kidney-disease/about/class/chronic-glomerulonephritis/ - 日本腎臓学会 「糸球体腎炎 一般のみなさまへ」
https://jsn.or.jp/general/kidneydisease/symptoms05.php - 日本病巣疾患研究会 「IgA腎症」
https://jfir.jp/iga-nephropathy/